令和6年度は、何かと物価高騰が騒がれました。では、実際にどうなのか?ということを検証していきます。
まずは、消費者物価指数です。2020年を基準とすると約10%物価が高騰しているということになります。
それに対して、賃上げ率はどうでしょうか?2020年を基準とすると大企業は約13.5%、中小企業は約11.5%となります。という事は、消費者物価よりも賃上げ率の方が高いということになります。ですが、残念なことに法定福利費(支給額×15%)が引かれることを考慮すると手取り額は、大企業で約13%、中小企業で約11.3%となります。一応、物価の高騰よりも賃上げ率の方が上回っております。上手に出来てますね。
次に、企業物価指数とサービス物価指数についてですが、企業間の取引、特に製造業においてどれだけ取引が増加したかというと、2020年を基準として企業物価は約25%の上昇、サービス物価指数では約9%の上昇となります。逆の見方をすると製造業などの物を売る商売は、25%値上げをして、サービス業のサービスを提供する商売は9%しか値上げができていないわけです。
製造業においては、仕入れの高騰もありますが、25%の価格転嫁が進んだわけですが、サービス業においては9%しか価格転嫁が進んでいない事になります。
2020年からの4年間で、サービス業は必要な物のコストが25%あがり、従業員に支払う賃金も11%上がっているのに、9%しか価格転嫁ができていないのが現実です。
実際のところ、特に飲食等のサービス業が苦境に立たされております。価格転嫁が進まないうえに、働く人が足りない。ようは単純に売り上げが足らないのです。そこに追い打ちをかけて、コロナ禍に借りてしまったゼロゼロ融資の返済です。また、世の中の構成が変わりました。飲食の儲けで大きな部分は、アルコールです。そのアルコールを飲む人が激減しているのです。
直近の統計がないのですが、お酒の消費量は、平成5年をピークとして、令和2年では-25%となります。私の予想では、令和6年時点では-30%あたりになっているかと思います。年々、お酒を飲む人が少なくなっているのです。簡単に言うとお酒を飲む人が高齢化してお酒の消費量が少なくなり、さらにこれからお酒を飲めるようになる若い世代の人口の減少によりお酒の消費量は年々下がります。実は、これはお酒の消費量と同じく、外食においてもおおむね同じような消費量の下がり方をしていく事が予想されます。外食で調子が良いのは、インバウンドによる外国人が訪れるお店くらいで、その他は、人口動態により、確実に消費は減ります。
この問題は、飲食に限らず、人口が減るという事は、弊社のような生活関連サービス業を含め、サービス業全体が縮小していくわけです。縮小していく業界の方が、価格転嫁が進んでいないという事が大きな問題です。
好調であったインバウンドに関しても、これから先は、日本に来る目的は買い物ではなく、日本という素晴らしい自然環境を見にくる。まさに観光にスライドして行きます。宿泊施設等は潤うと思いますが、都会の百貨店等で高額な物を買う観光客は減って行くことが予想されます。チャンスとしては、都心部ではなく、これから観光客が増えるであろう自然豊かな田舎の方でしょうね。特に新幹線がとまるアクセスの良い田舎は、インバウンドの海外旅行客を上手く集める事ができれば地域活性化のチャンスとなります。歴史ある神社仏閣や、景観の良い自然文化資産に人は集まります。日本は北から南まで、風土も景色も違い、食べ物も違う。そして治安の良い観光地です。
本来であれば、自動車産業を屋台骨とした製造業での日本の復興を期待したいですが、どうもそれは現在の世界情勢を見る限り難しそうです。日本と同じく工業大国であるドイツが、日本よりも先に厳しい状況を迎えています。自動車産業が電気自動車の参入により大変革時代を迎えようとしているからです。まだまだ電気自動車は、と思っているかも知れませんが、発展途上国においうては、エンジン自動車よりも開発が簡単な電気自動車の方が自動車業界への新規参入で有利なのです。現在は、少し元気がないですが、電気自動車でいうと中国がだんとつに強いというか安いです。何故かというと、バッテリーの仕組みが違い安価だからです。先進国はプライドがあり、中国で採用されている安価なリン酸鉄のリチウムイオンバッテリー(LFP)ではなく、従来からの高額な三元系のニッケル・コバルト・マンガン(NCM)を使っている為、バッテリーにコストがかかり過ぎ、中国の電気自動車に比べてコストがかかり過ぎているのです。
結局消費者というのは、安くて良いものがあれば、そちらにスライドして行きます。文房具屋さんで1000円で売ってるハサミと100円均一で売っているハサミ、多少切れ味は違いますがどちらを買う人が多いかというと・・・。
高く売る為には、高いお金を出す価値がなければなりません。にも関わらず、日本の自動車業界は認証不正であったり最近はブランドをそこなうような事態が起きています。
だいぶ話がそれてしまいましたが、来年以降も物価の高騰は続く気がします。日本においては消費量が減っていき売り上げを値上げでしかカバーできないからです。ようは価格転嫁です。価格転嫁が進むことにより、賃上げができます。逆に言うなら賃上げする為に価格転嫁しなければなりません。この連鎖により、当分の間は、物価高騰が起きます。そして、その先に、物が高くなり過ぎた時に、安価なサービスに消費者が流れることにより、やっと物価高騰が止まるのではないでしょうか?