賃上げの背景

昨今、物価上昇に伴う、賃上げが騒がれております。

中小企業にも、賃上げの余波が出ております。

今回の中小企業の賃上げ率ですが、定昇とベアを合わせて、1.5〜2.5%の水準です。

と言うことは、普段は、これよりも昇給が低いわけです。

大手企業は、今回、定昇とベアを合わせて3.0〜5.0%の水準です。

ちなみに、弊社は、毎年平均的に、定昇が2.0〜3.0です。なので、一般的な中小企業よりも、普段から賃上げしているわけです。

もともと、中小企業のほとんどは、日本型雇用の年功序列制が多く、若く経験が浅い時期は給料が低いのが一般的です。

大企業も、以前はそうでしたが、最近は成果主義に切り替わり、若くても優秀な人材には、中小企業よりも高い金額が払われるようになりました。

その結果、初任給が高い、大企業に人が集まり、中小企業は、万年人手不足です。

そこで、中小企業も大企業とまではいかないですが、初任給を上げました。

結果、中小企業は、社員の給料を定期的に上げていく体力が削られて、昇給ができなくなっています。

そして、昇給のない中小企業は離職率が高く、常に人手不足です…。

本当に困った問題です。

なんにせよ、中小企業に限らず、大企業も含めて、現在の平均勤続年数は、12 年程度です。

なので、25万でスタートしたしても、32万程度の給料で退職していく事になります。

企業が、人件費に割ける金額というのは限りがあります。

そうした時に、金銭的に余裕のある大企業は、初任給をどんどん増やして行きます。日本の労働者人口は、これからも加速度的に逆ピラミッド型で将来減っていきます。大企業でも、人の確保に熾烈を極める事になるからです。

ただ、すでに、人の取り合いから初任給が高騰すると言うことは、働く人の能力が低ければ、昇給は行われません。いわゆる成果主義です。今まで、年功序列であった中小企業も、これから人の取り合いで、初任給を上げていく事になりますが、もともと限られた売上の中でやりくりしている人件費を上げていく訳ですから、昇給の余裕はなくなります。

従業員をつなぎとめる為に、今年は、思い切った賃上げに取り組む企業が多いです。それくらい人手不足はこれから深刻な物となります。

今更、気づいても、もう手遅れなんです。

社会構造的に、人手不足となる事は、随分前から、わかっていました。

一時的な賃上げで無理矢理、人手不足を解消できる事はありません。一過性では、駄目だと思います。

やはり、企業が継続して存続する為には、社会に貢献できる仕事であり、そして、従業員にきちんと利益を還元する事が大切だと思います。

そういう姿勢が大事なんじゃないでしょうかね…。

口で言うのは簡単ですが、とても難題です。

それにしても、今回、経営体力がない中小企業が無理に賃上げをして、火の車にならなければ良いのですが…。

社会という向かい風の中を全力で走っている車には、多少の火がついても消えますが、すでに止まりかけてる車は、燃えるのが早いですよ。